アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

わたしたちのうた、わたしたちの踊りをつくるプロジェクト

文化薫る地域の魅力づくり実行委員会

実施期間
2016年6月~12月

活動の目的

特色ある伝統・民俗芸能が多数残る鹿児島。しかしながら、若い世代や該当地域外の人々は直接触れる機会が少ないのが現状である。昨年度の伝統芸能のリサーチに基づき、今年度はこの場所で「今」を生きる市民自らが芸能を創作し、コミュニティーを横断しながら自分たちにとってのうたと踊りを創ることで、それが生きる力となることを目指す。

活動の内容

ダンサー・振付家の手塚夏子氏がナビゲーターとなって6~10月、市民参加者とともに計5回のワークショップを行った。初回は「地域×アート鑑賞会 未来のまつり、今日のまつり」と題し、手塚氏がセレクトした世界各地のさまざまな「踊り」の映像を鑑賞した。また、11月に開催される「おはら祭」当日に発表することを目指し、「わたしたちにとってのうたと踊り」を制作することを試みた。ワークショップには5歳~70代という幅広い層が参加し、協働して「いつの間にか音頭」という仕組みを制作した。イベント当日は仮面づくりワークショップや、アサダワタル氏と手塚氏とのアフタートークも実施した。また、当事業の記録を電子書籍化し、公開した。

実施場所:かごしま文化情報センター(KCIC)

参加作家、参加人数

ナビゲーターとして手塚夏子氏、事前ワークショップのゲスト講師として日髙加正山氏、イベント当日の仮面ワークショップ講師として仮面夫婦プロジェクト、イベント当日音楽担当としてカエルPROJECT、アフタートークゲストにアサダワタル氏。事前ワークショップ参加者は累計68人、イベント当日は110人の人々が参加した。

他機関との連携

日髙民謡薩州会とワークショップを実施。かごしま仮面祭実行委員会と仮面づくりワークショップを実施しイベント告知・PRを行った。

活動の効果

事前ワークショップには5歳~70代という幅広い年代の人々が参加し、歌詞をつくる過程でそれぞれの日常を共有し、ともにうたうことで世代間の交流、相互理解の場となった。また、普段は表に出ない本音を短冊に書き歌詞にし、うたい踊ることでそれぞれの違いを認め合うことにつながった。参加者からは、ワークショップを体験した後では、以前より人とコミュニケーションをとることがうまくなったという声も聞かれた。

活動の独自性

特色ある伝統・民俗芸能が多く残る鹿児島において、その固有の文化的資源と現代アーティストの視点を交差させるべく、昨年度の当事業で日本各地・アジア圏の民俗芸能の調査を独自に続ける手塚夏子氏が、鹿児島市内の伝統・民俗芸能をリサーチし、電子書籍「断片の脈動」を刊行した。それをふまえて今年度は、ここに住む人々とこの地におけるうたと踊りのワークショップを重ね、彼らの声を取り入れながら仕組みとして制作した。その過程には地元の民謡に精通する講師が参加するなど、地域と密に関わり合いながら、あたらしい手法を追求した。また、その一連のドキュメントをいつでもどこでも誰でも知ることができるように、電子書籍に収め無料で公開した。

総括

ワークショップでは手塚夏子氏がナビゲーターとなり、うたと踊りがどうやれば人々の間から自発的に湧き上がってくるか、毎回さまざまな試みを行いながら丁寧に参加者と向き合った。講師が振り付けや歌詞を作るのではなく、あくまで参加した市民のアイデアや声を汲み取りながら、「いつの間にか音頭」という仕組みを完成させた。仕組みにすることで、鹿児島という地域と密接に関わって制作したものでありながら、地域や時代を置き換えても実施可能なものとなった。イベント当日は、鹿児島最大の祭りである「おはら祭」が開催されており、その祭りを訪れた人々が「いつの間にか音頭」に参加する様子も。自作の仮面を作って仮装して来た子ども、仮面づくりワークショップで制作した仮面をつけて踊る人、飛び入りで参加した小学生がお立ち台に乗り即興でうたう姿などが見られ、決まった歌詞や振付けを知らなくても、その場で誰でも参加可能な自由な場が創出された。また、当事業のドキュメントを電子書籍に記録して公開し、誰でも容易に情報の入手ができるようにした。今後この記録を手に取った人が、どこかの地域で「いつの間にか音頭」を実施してくれる展開が訪れることを期待している。

  • 仮面づくりワークショップの様子

  • 「いつの間にか音頭」当日の様子

  • アサダワタル氏を迎えたアフタートーク