アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

北海道アーティスト・イン・スクール2015

一般社団法人 AISプランニング

実施期間
2015年6月~2016年2月

活動の目的

現代アートを媒介とした活動を通じて、小学校を基点(小学校校区を単位とした)とした地域コミュニティ―の創造を目指す。対象は児童、保護者、教職員、地域住民である。また、活動を通じてコミュニティーが日常的に持続するための人材発掘、育成も行う。

活動の内容

小学校に芸術家を「転校生」として紹介し、余裕教室をアトリエとして利用しながら、数週間にわたりその場を拠点とした創作活動を通じて児童、保護者、教職員、地域住民と交流する。交流はおもに中休み、昼休み、給食時間、放課後に行われ、小学校運営・カリキュラムに負担がかからない状況で行われる。その中で、学校が地域交流の拠点として活用される意義や可能性を参加者と共有してゆく。また、当活動期間中に実施するシンポジウムを通じて継続的なコミュニティーの存続を担う地域コーディネーター等の人材や地元企業、自治体を発掘し、事業運営に必要なノウハウを継承し、ネットワーク構築を行う。
実施場所: 札幌市内小学校 北陽小(長期)、藻岩小(長期)、平岸高台小、栄東小、星置東小
実施期間: 2015年8月20日~12月16日(北陽)、2015年6月7日~2016年2月20日(藻岩)、2015年9月1日~9月16日(星置東)、2015年10月1日~2016年2月2日(栄東)、2016年1月20日~2月11日(平岸高台)

参加作家、参加人数

北陽小/halle(福原明子、大橋鉄郎、櫻田竜介) 350名
藻岩小/藤木正則 414名、星置東小/永田壮一郎 675名
栄東小/小町谷 643名、平岸高台小/黒田大祐 265名
総計2,347名

他機関との連携

北陽小ミニ児童会館、平岸高台小ミニ児童館、平岸高台地区町内会、星置東小学校PTA、札幌資料館SIAFラボ

活動の効果

活動をきっかけに多くの保護者や地域住民が小学校に訪れ、出会い、交流するきっかけを作り出した。そして、その場に居合わせた人々が、アートを通じてさまざまな生き方や価値観に触れ、多様な個性を理解し自分自身を見直す場を生み出した。また、小学校を集いの場とすることで、児童が活動の主体となって地域住民を受け入れ交流する経験を通して、コミュニティーを作る一員としての喜びを実感し、地域間の新たなつながりができた。

活動の独自性

アーティストが小学校に滞在し創作活動を行うことで、そこに「集いの場」という新たな機能を生み出してゆく。小学校には多様な用途に使用できる複合施設としての条件が整っており、かつ地域住民の認知度や安心度も兼ね備えている。そういった状況に注目し、徒歩圏内における「地域コミュニティー」の場としての小学校に可能性を感じている。そこでアート創作活動を展開するなかで、新たな価値観や多様性を示し人々を引き寄せるきっかけを作り、人々が考え集い合う場を自然に作り出す。

総括

当活動の目的はアート創作活動を通じた「場づくり」である。アーティストという独自の価値観や文化を持つ人間が、小学校という既存の社会に侵入・介入することによって、その場に互いの領域が混じり合う空間が生まれる。創作活動という手がかりをもとに、子どもや教職員、保護者といったその場に居合わせた人々が場の持つ新たな文脈によって互いの関係性を構築してゆく。アーティストは自身が定めたゴールに向けて作品を制作してゆく。おとどけアートの本質は、その過程に寄り添い、アーティストが制作過程において向き合う問題や障害、発見や成功(それは制作活動に生じる物理的な事象だけではなく、他領域が混じり合う際の干渉・融合も含む)を可視化し、共有・共感する工夫を行うことで、その状況に「魅力(引力)のある場」を育み、また拡張してゆくことにある。この行為こそが、同時に一人一人が持つ世界観を広げ、豊かさを生み出すということだと思う。

  • 全校生徒・教職員参加の演奏会

  • 多目的室を作品の展示会場にして一般公開

  • 活動作品を札幌資料館内にて展示