アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

とかちアーティスト・イン・レジデンス2015

とかちアーティスト・イン・レジデンス

実施期間
2015年4月~2016年3月

活動の目的

(1) アートを通じた国際交流と地域の個性の発掘に参画する人材育成。 (2) 広域的に点在する場所と食、産業、人、個性あるライフスタイルを発信。 (3) アーティスト育成と世界のアートシーンにおけるとかちの発信力向上。

活動の内容

地域における独自性の根本は、風土と歴史や経緯を基盤に、そこで活動する人々によって生み出されると考えられる。地域それぞれの人材やあらゆる資源をもとに創作を組み立てる手法を用いることが重要である。その手法によって、それぞれの独自性から生み出される新たな特色が、アートを通じた地域振興において創造されるという仮定を設定し、実施したものである。
地域の慣習にとらわれない「よそ者=アーティスト」が地域に滞在、住民の感性や発想を刺激して、文化的観点から地域振興を担う人材育成に関与する。アーティストの活動の支援を通じて国際交流を促進した。地域の課題解決のニーズに合致した表現手法を持つ芸術家が地域に長期滞在し、交流を通じた制作活動のプロセスと成果を展示、さらに地域住民が参加するワークショップを行った。
実施場所: 北海道十勝郡豊頃町、河西郡中札内村、十勝郡広尾町

参加作家、参加人数

(1)ヤレック・ラスティッヒ氏(ポーランド)【中札内村】
(2)イナ・ニレンバーグ氏(ドイツ)【豊頃町・広尾町】
(3)加藤かおり(日本)【豊頃町】

他機関との連携

中札内村では「なかさつないアーティスト・イン・レジデンス(N-SIR)」、豊頃町では「とよころアーティスト・イン・レジデンス」「とかちエケテカンパの会」(アイヌ民族子弟への教育支援活動)、豊頃町役場、中札内村役場、広尾町役場、豊頃町商工会と連携

活動の効果

芸術家の着想を促すために十勝管内各所の視察を地域住民によるアテンドで行い交流を深めた。各所をアテンドした結果、芸術家や地域住民によるSNS等を通じた発信があり、H28年度プログラムへの参加希望の問い合わせが数十件来ており、とかちの認知度が向上していると考えられる。また、アート・カフェの取り組みは地域に波及しており、同様の取り組みとして期間限定の飲食店イベントが多数開催されるに至っている。さらに視察を行った自治体において整備後活用されていない屋外施設などの利活用計画が浮上したり、活動に対する次年度(H28)予算化が行われた。

活動の独自性

アートを通じて地域においてさえ忘れられ認知されていない固有の宝にあらためて出合う機会が創出され、地域住民による地域振興への取り組みが促進されている。
特に地域住民ですら日常的には接点のないアイヌ民族子弟との交流によって、地域のみならず世界に向けた民族文化への理解を広めた。
また、十勝の地域生活の魅力である食を通じた交流も深まり、滞在期間における芸術家との交流では、地域住民による地産品をふんだんに活用したお惣菜の提供やパーティ開催などが行われた。

総括

普段、アート作品の展示場所としていない施設を活用し、畳が敷かれた上に作品を展示したり、公共施設の敷地内に作品を設置して、地域住民におけるアート作品への親和性を高めた。中札内村では地域住民から集まった48種類のさまざまな持ち物に銀泊を施した作品が制作された。普段はさほど使っておらず、捨てることもできないモノが光をそのまま反射する銀によってあらたな輝きを放ち、鏡のように見る眼差しを反射した。展示終了後、再び持ち主のもとに戻り、その人の部屋の中で再び輝き続ける。この作品は、アーティストだけでなく、それを持ち寄った人たちとの共作でもあり、住む人の歴史を映す作品となった。また豊頃町では日本人が日常では思い起こさない「侘・寂」を異国のセンスを通じて表現した空間が現れた。日本人に根ざしていながら意識されない文化的な根をあらためて想起させる機会となった。
さらに広尾町では、停滞の気配がある地域活動に芸術家の発想を投入し、次年度の活動に向けた広報となった。

  • 中札内村豆の資料館ラスティッヒ氏作品展示

  • 海山畑の幸をアートに食す「アートカフェ」

  • フェイスブックによる活動や地域情報の発信