活動の目的
秋田県内で最も高齢化が進む上小阿仁村の最奥地にある小さな集落「八木沢集落」。そこを主たる舞台として、古くから伝わる伝統芸能、生活や文化など、地域固有の資源を最大限に活用しながら、現代芸術と美しい山々が織り成す里山全体を文化芸術空間として創造し、そこを訪れる方との交流人口の増加や、地域の活性化を目的としている。
活動の内容
村内3会場で芸術作品の設置を行った。7月から8月にかけて、廃校となっている旧沖田面小学校を活用したアーティスト・イン・レジデンスを実施した。招へい作家4人が沖田面集落に滞在し、廃校舎で作品の制作・展示を行った。参加作家らは作品を制作するにあたり、村での滞在を通して感じた思いや考え、村で発見した事柄について、自身の表現方法により作品として制作していただいた。オリジナルポスター・グッズ製作販売や専用のホームページの立ち上げ、新聞広告の掲載など広報活動も積極的に行った。八木沢会場ではイベント開催時にあわせ村の野菜を使用した夏野菜カレーや村の特産品を使用した生ジュースが人気で、それを目当てに訪れる方も多くいた。「道の駅かみこあに」にインフォメーション機能を持たせ、分かりやすいイベント形成に努め集客を図った。
実施場所:秋田県上小阿仁村
参加作家、参加人数
33組のアーティストが71作品を八木沢地区にある棚田や廃校など3会場に展示、現代芸術作品が融合する芸術空間を創造し、来場者を楽しませた。開催前に行ったワークショップでは村民や秋田公立美術大学の生徒など多くの方が会場となる公民館や旧小学校の清掃に参加した。8月1日から44日間行われたイベントには11,717人もの来場者が訪れた。
他機関との連携
上小阿仁村、秋田県、バス会社、宿泊業者、秋田公立美術大学、上小阿仁村商工会女性部、上小阿仁村婦人会、食生活改善推進協議会などと連携して事業を進めた。
活動の効果
2012年から継続して開催してきたイベントで年々来場者数は多くなっている。イベントや広報活動に力を入れ、根強い固定ファンも多く獲得した。「上小阿仁村=KAMIKOANIプロジェクト秋田」のイメージも濃く定着した。このプロジェクトが村を代表するイベントであるとの意識も村民に芽生えてきている。アートの持つ力が十分に発揮され、都市と農村間、世代間の交流人口の増加や上小阿仁村の知名度の向上に大きな効果をもたらした。
活動の独自性
平成24年度、新潟県で行われた「大地の芸術祭」の飛び地開催として、芝山昌也氏のディレクションによって行われた。秋田県内で最も高齢化が進む人口約2,600人の村、上小阿仁村の最奥地にある7世帯14人の小さな集落「八木沢集落」。主たる舞台として、そこに古くから伝わる伝統芸能、マタギなどの狩猟文化、祭事、食文化、生活文化など、地域固有の資源を最大限に活用しながら、現代芸術の新しい表現と、美しい山々が織り成す非日常的な新しい体験は、訪れた人々の共感を呼んだ。住民参加の意識高揚を目的に、村内全戸へ事業の旗を配布し、自宅玄関前への掲揚をお願いした。多くの家庭で掲揚していただき、村民が一丸となって来場者をもてなした。
総括
期間中は晴天に恵まれ、平日にも多くの来場者が訪れた。八木沢地区では作品が野外に点在しているため、まだ誰もいない早朝の時間を狙いカメラを片手に来る方が多くいた。アーティスト・イン・レジデンスでは作家が作品制作を行うだけでなく、周辺地域の住民との交流や地元行事への参加などを積極的に行い、地域に溶け込んでいく姿も見られた。旧小学校を利用した作品の展示では教室ごとに作家が違うため、各教室に踏み入れた瞬間に全く違った空間が広がった。八木沢地区の棚田を舞台とした各種イベントでは、四方を山に囲まれた特異な環境が高評価を得た。音楽や舞踏では山にはね返る音や山の緑、空の青がいっそう、来場者の心を掴んだ。出演者からも体験したことのない魅力的な場所との評価をいただいた。急激な過疎化が進行している村の中にある8世帯14人の暮らす八木沢集落において、4,700人を超える来場者が訪れたことは大きな意味がある。多くの方が村を訪れ、村を知り、村に興味を持ってもらうことが過疎化を食い止めるためのスタート地点であり、このプロジェクトを足掛かりに次のステップに踏み出すことが重要である。28年度以降は新たなステージへ向け検証を行う期間とし、規模を縮小し開催することになった。今後の計画についてテレビやマスコミでも大きく取り上げられ、その動向が注目を浴びている。
-
八木沢地区で行われた「八木沢ウォーキング」
-
秋田県産杉合板を使用して制作されたアート作品
-
八木沢地区の棚田舞台で行われた音楽イベント