活動の目的
本事業は、舞台である丹那盆地を象徴する、昭和初期に完成した丹那トンネルと、トンネル建設中に起きた北伊豆地震の震源・丹那断層などの特徴ある歴史や地理に焦点を当て、芸術の切り口から地域の魅力を発信し、地域活性化を図ることを目的とする。
活動の内容
事業計画と長光寺のモニュメントの制作は、すでに2013年の秋に始めており、2014年は資料展を行った。2015年の春には、クルブシベースのモニュメントの制作の統括をお願いした左官白石博一さんと地元の左官職人との打ち合わせをし、夏から制作に入った。
展覧会の会期中は、美術批評家の黒瀬陽平さんをお迎えしてのトークイベントや地元職人によるトークセッション、地質学者の小山真人先生の講演会を開催。同時にジオガシ旅行団によるカフェや地元ジオガイドによる丹那断層公園でのジオガイド、丹那盆地を歩くジオツアーも開催した。展覧会の最終日には、勇壮なモニュメントのお焚き上げと、厳粛にモニュメントの形見分けを行った。
実施場所:KURUBUSHI-BASE(静岡県田方郡函南町丹那)、渓月山長光寺(静岡県田方郡函南町畑)
参加作家、参加人数
参加作家:住康平(美術家)、白石博一(左官職人)ほか9名
展覧会参加者: 第1会場329名、第2会場319名、トークイベト参加者31名、小山真人講演会参加者103名、丹那断層カフェ参加者30名程度、ジオガイド参加者19名、ジオツアー参加者5名、お焚き上げ参加者50名程度、形見分け参加者14名
他機関との連携
函南町、函南町教育委員会、美しい伊豆創造センター、伊豆半島ジオパーク推進協議会からの後援を受け、広報活動に協力をしていただいた。
活動の効果
芸術というこれまでにないアプローチで丹那盆地に迫った今回の事業では、従来の歴史や地学などの学術研究や観光で訪れる客層とは異なった客層を丹那盆地に呼ぶことができた。特にお寺という地域の文化の核となる場で展覧会を開催したことの意義は大きい。芸術が人々の精神に訴える力をより強くアピールし、人々が芸術を通してこの土地の歴史や地理などに思いをはせることができる場所を設けることができた。
活動の独自性
これまで丹那盆地の特異な地形、北伊豆地震と丹那断層、丹那トンネルなど、自然資源、歴史資源をモチーフにした造形作品が現代美術の手法で作られたことはなかった。現代美術が地質学と手を結び、サイトスペシフィックなプロジェクトとして展開した点で、本事業は開催前から大きな注目を浴びた。また今年度は、伊豆半島ジオパークが世界ジオパークの加盟に向けてPR活動をしており、その活動の一つとして取り上げていただいた。地域アートの中には、商業や観光をアートで活性化する事例が多々見られるが、本事業は、地質学、歴史にアプローチすることで教育研究と結びつき、人々の丹那盆地への興味関心を喚起させた点で独自性がある。
総括
2週間の展覧会会期中、会場には300人を超える来場者があり、関連イベントの参加者も定員数を超えた。展示したモニュメントのコンセプトを考えながら、丹那盆地の二つの会場や丹那断層公園をウォーキングで移動する方もいらした。断層公園でのジオガイドの解説やジオガシ旅行団による丹那断層カフェでは、ユニークでわかりやすい方法で、来場者に丹那断層の魅力を伝えることができた。また、小山真人先生の講演会は、地元からの参加者が多く、伊豆半島と丹那断層の地質について、熱心に講義を聴く方がたくさんいた。最終日のお焚き上げでは、勇壮なお焚き上げを見るために関東方面から来場した方もいた。
地元のラジオや新聞記事、自治体の広報の効果か前年度よりも地元からの来場者が多かった。地元メディアによる広報活動は成功したといえる。また、今回は、FacebookやTwitterでも広報活動を行ったが、来場者が展覧会の画像をアップしてくれたり、シェアやリツイートで展示の情報を広めてくれて、それを見て訪れた来場者もいた。
地元の方だけでなく、これまで丹那盆地や丹那断層のことを知らなかった方にも盆地の魅力を伝えることができた。