アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

ART BASE 百島

広島アートプロジェクト実行委員会

実施期間
2015年4月~2016年3月

活動の目的

廃校となった旧中学校を再生した「ART BASE百島」を拠点に、アーティストが地域社会と関わりながら、地域に固有の資源を発掘・活用し、空き家や耕作放棄地、少子高齢化などの課題に、現代美術の観点から取り組み、地域再生に資することを目的としている。

活動の内容

① 島内の古民家を改修してアート作品とともに滞在ができるレジデンスを計画。1年目となる今年は、現地の調査と設計をアーティストと建築系大学との連携により進める。招集作家は西野達、ス・ドホ。2018年度の完成に向けて、地域住民を巻き込んだワークショップも実施。
② 納涼祭の復活プロジェクトは2年目。30年ぶりに復活させた島のお祭りを継続する仕組みづくりを構築。
③ 桃の木植樹プロジェクトも2014年度からの継続した取り組み。今年はさらに60本の植樹を行うと同時に、その耕作放棄地に新たにできるヘリポートも百島の目玉となるように、周辺の景観を含めたデザインを考案。
実施場所:ART BASE 百島、百島島内各所

参加作家、参加人数

ス・ドホ、柳幸典、西野達、工学院大学(東京)、広島大学(広島)、島民、他。
①320名 ②740名 ③120名

他機関との連携

広島県や尾道市をはじめ、地元には新たに町内会組織を立ち上げた。また、広島大学や工学院大学など教育機関との連携を強化した。

活動の効果

人口減少、空き家や耕作放棄地の増加など、離島の課題解決に向け、現代美術作家を招聘しての、地域と一丸となった取り組みは、先進的事例として行政や大学等の視察を多数受け入れることとなった。そして外国人の来島など、多方面での交流人口が増加。また、島への移住者増加にも繋がり、定住促進に向けた空き家の再生や地域住民との取り組みも本格化した。

活動の独自性

尾道から鞆の浦を繋ぐ海道の中間に位置する百島において、周辺地域とのネットワークを構築し、瀬戸内海の潜在的な可能性を考案しながら進めているという点。また本事業のスタッフは、実際に島で暮らし、地域の行事や祭りに積極的に参加しながら、地域住民と触れ合うことで信頼を深めている。参加作家や学生たちも、島での滞在制作を基本とし、島民との協働や島特有の自然や歴史、文化など、地域性を重要視している。

総括

広島県や尾道市、周辺地域との連携を強化したことで、行政や学校、地域団体、外国人観光客などの来島が増え、離島「百島」と「ART BASE 百島」の周知が多方面に及んだ。今年の招聘作家のプロジェクトは、3年にわたる長期プロジェクトのため、地域住民との信頼、協働がよりいっそう重要となる。同時に地域からは継続的に来場者を迎え入れることが期待される結果となった。今後は、特に尾道や鞆の浦を繋ぐ海道でのアートクルージング事業の強化や、瀬戸内海文化圏との連携を図りたい。今後も地域の伝統を守り、行事を継続することを目指しながら、現代美術を取り入れた地域資源の発掘や活用によって、引き続き課題解決を行い、経済的に継続可能な仕組みづくりを行う。

  • 古民家改修作業。招聘作家と大学生による調査・清掃

  • 納涼祭復活プロジェクトの2年目

  • 百島桃の木植樹プロジェクトの様子