アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

奥能登・上黒丸アートプロジェクト

上黒丸アートプロジェクト実行委員会

実施期間
2014年5月~11月

活動の目的

アートを媒体に典型的な里山里海文化を有する奥能登に埋もれた多様な文化を再発掘し伝える。同時に環日本海文化及び大陸へと向かうアジアの文化を検証し、今後の可能性を探る。

活動の内容

①廃校となった小中学校をレジデンス施設として整備し、美大生を中心とした展覧会の開催。②廃校中庭に構築した劇場空間に於いて地域に受け継がれている唄、踊りを披露。③祭りの要素を取り入れ演劇と二胡奏者によるコンサートイベントの開催。④現地の活動組織と連動したウォーキングイベントの開催と現地食材を活かした「上黒丸食堂」の企画運営。⑤インド少数民族との交流イベント。⑥古からの伝統である鯨漁に注目した「上黒丸鯨組」を開催。⑦地域交流イベント「巡回むかしがたり幻燈会」の開催。
実施場所:石川県珠洲市若山町上黒丸地区

参加作家、参加人数

金沢美大チームを中心に、環日本海文化をキーワードに北海道及び九州から招聘したアーティスト、人類学者チームが長期レジデンスで活動展開。地域組織と連動しオープニングの劇場は満席となり、珠洲市の完全バックアップ体制も固まり国際展に向けた起爆剤となった。

他機関との連携

*珠洲市、金沢美術工芸大学が包括協定提携しバックアップ。
*地域の活動拠点「上黒丸すてきな散歩道実行委員会」との連携、他

活動の効果

*廃校小中学校のさらなる活用。
*消えかけている伝統文化の再興、復活。
*地域の美しい里山の保全活動への展開。
* 閉ざされた場としての閉塞感から、温もりのある人間交流の場への転換。
*アーティストの移住による新たな価値創造の発火点となる。
* 環日本海文化の中心的拠点としての位置付けとその意義の確認、発展。
*奥能登全域を視野に入れた国際展開催の実験活動と啓蒙。

活動の独自性

これは奥能登に於ける初めての現代アートによるプロジェクト。同時に「上黒丸地区」は能登半島先端、珠洲市のさらに山中。その特徴を活かし、今後、波状的に広がる活動のプラットホームとしての役割を担う。金沢美大との連携はもちろん、産学連携も視野。そして2017年度の国際芸術祭の開催決定も受け、さらなる連携が加速されると期待されている。

総括

金沢美大の教師グループが県の補助金協力を得て現地調査から始めた2年間の実験的プロジェクトの実行は、短期間の活動ながら多くの成果を上げた。基本的なアプローチである地元の方々との実直で熱意ある交流活動による理解と、行政に対するアートプロジェクトへの啓蒙活動、協力要請の両輪が相乗的に動き出した。今後は、こうした活動を支える人材教育、長期ビジョンに基づいた継続可能な活動の組織作りと多ジャンルの力を交差させた連携する力が必要となる。2年後の国際芸術祭は、その重要な実験期間となるものと思う。