活動の目的
木曽川に臨む中山道太田宿は、かつて人が行き交い物資が流通する都市機能をもった場であったが、現在は人口の空洞化が進むなど低迷している。そこで、木曽川河畔や中山道太田宿界隈の良さを再発見するきっかけとなるアートプロジェクトを行うことで、地域や地域の人々が再び活気を取り戻すことを目指す。
活動の内容
今年度は開催地である美濃加茂市が誕生して60年ということもあり、きそがわ日和2014では「まちの記憶を拾い、編む」をテーマとし、活動を行った。町のいたるところに残る人々の記憶や当時の風景を拾いあげ、それによって町の歴史が呼び覚まされ、見慣れた町の魅力が再発見されるような様々なプログラムを企画、実施した。①7名の作家が町を何度も訪れ、町の魅力を感じ、作品制作を行い、町中にて展示を行った②美濃加茂市と連携し、市制60周年記念事業として美濃加茂市の歴史を振り返るパネル展示を行った③きそがわ日和スタッフが町を案内するガイドツアーを開催し、町の魅力を紹介しながら町歩きを行った④町の人から60年前の思い出を聞き、それを記事にした「きそがわ還暦新聞」の発行を行った。
実施場所:岐阜県美濃加茂市
実施期間: 2014年4月1日~10月13日(きそがわ日和2014開催期間10月5日~13日)
参加作家、参加人数
地域外から7名の作家を招致し、外からの視点で町を感じ、作品制作を行ってもらった。約2,000名が来場し、来場者アンケートを実施した結果、8割が地域外からの来場だった。来場者の6割が初めて美濃加茂を訪れ、町の魅力を感じ満足したという結果となった。美濃加茂市の若い職員や住民ら約40名がボランティアとして参加した。
他機関との連携
美濃加茂市、美濃加茂市民ミュージアムとの連携、地元企業(木曽川観光株式会社)による作品制作協力、NPO法人宿木による地元住民との橋渡し、市民によるサポーターやボランティアの協力を得て事業を実施している。
活動の効果
作家と市民が共に歩きながら町の隠れた魅力を見つける町歩きツアーや、町の昔の姿をパネル展示した写真展を町中で行ったり、地元住民に取材して60年前の思い出を新聞にして発行する作品を制作することで、過去にきそがわ日和に興味がなかった地域住民の人達が足を止め、当時の風景を懐かしんでくれたり、昔話をしてくれるなど、これまでにはなかった地元の人達の反応があり、地域の人達との交流を深めるきっかけとなったと感じている。
活動の独自性
きそがわ日和は、アートだけでなく、建築、工芸、音楽、食文化などを楽しめるプログラムも提供することで、来場者はそれらを楽しみながら町や川辺を歩き、ゆっくりと時間を過ごす中で歴史や自然を感じ、木曽川河畔や旧中山道太田宿界隈の魅力を再発見してもらうプロジェクトであり、プロジェクト自体が持つゆるやかな雰囲気が独自性であると考えている。また、きそがわ日和には行政をはじめ、地元団体や地元企業・商店、市民など多くの人たちがスタート時から多く関わり、協力をしてくれていることは大きな強みである。
総括
きそがわ日和2014では「まちの記憶を拾い、編む」をテーマに掲げ、深く地域と関わるプロジェクトを企画し、実施した結果、町の過去と記憶を振り返ることで地域の魅力を再認識する機会を創出することができただけでなく、多くの来場者がきそがわ日和をきっかけに町を訪れ、町に魅力を感じてくれたことや、これまで話をしたことのない地元住民同士がきそがわ日和をきっかけに話をするようになったことなど、きそがわ日和が町や町の人々に少しでも変化を起こしていることを実感できるという成果があった。きそがわ日和は5年目を迎え、この5年間に関わっていただいたアーティストや様々な地域の関係者、そして支援してくれているサポーターとの関わりは着実に増え、目に見えない大きな財産になっている。培われたこの信頼関係を大事にしつつ、規模は大きくなくても、5年後10年後を見据え、「きそがわ日和」自体が地域の人々の誇りとなれるよう、ていねいに物事を進めていきたい。