アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

生きるためのアート

特定非営利活動法人 クリエイティブサポートレッツ

実施期間
2014年5月~2015年3月

活動の目的

障害のある人の存在を全肯定し、障害のある人とスタッフとの関係性の中に、「アート」があるといった実例を、多くの方々に伝えるとともに、新しい福祉のあり方を示す試みを行う。

活動の内容

5月より様々な人たちの居場所として「のヴぁ公民館」をオープンした。地域の方々、子ども、大人、障害のある人たちが混然として一緒に過ごし、ほぼ無料で利用している。ここで、誰もが参加できる毎月1回2部制の「かたりのヴぁ」を実施した(計20回)。10月には、のヴぁ公民館のグランドオープンとして、障害やアートに関心のなかった大学生が障害福祉施設アルス・ノヴァを体験し、それについて語り合う「学生かたりのヴぁ」を実施した。2015年3月には、全国アートNPOフォーラムIN浜松を、のヴぁ公民館を会場として開催し、「生きるためのアート」をテーマに、障害福祉施設を体験するメニュー等を盛り込み、多様性、寛容性のある社会について考える中で、様々な提言があった。あわせてアルス・ノヴァの日常を紹介する展覧会も行った。
実施場所: 静岡県浜松市 のヴぁ公民館 障害福祉施設アルス・ノヴァ

参加作家、参加人数

西川勝(哲学者)、深沢孝史(アーティスト)、上田假奈代(詩人)、大友良英(音楽家)、佐々木雅幸(文化経済学者)、池上重弘(文化人類学者)、高木誠一(福祉専門家)、渡辺達也(教育者)、ムラキング(詩人)

他機関との連携

静岡県文化政策課、浜松市企画課創造都市推進グループ、浜松市入野地区社会福祉協議会、NPO法人アートNPOリンクとの協働事業

活動の効果

立場も年齢も違う人たちが語り合うことによって、「他者」への共感、理解が生まれること、解らないこと、理解ができないことに性急に答えを求めるのではなく悩み続けること、それを誰かに引き渡していくことを時間をかけながらじっくり体現することができた。また、障害福祉施設の現場を開くことで、障害や福祉の中にある創造性を多くの方々に感じていただく機会となった。

活動の独自性

自らが障害者福祉施設を運営し、常に、障害者を軸に据えて、彼らとスタッフ、その周りにいる人々との関係性にアートがあるといった考え方。さらに、そうした関係性の作り方は、障害者に限ったことではなく、「あなたと私」「知らない他者」との関係性、コミュニケーションのあり方に、新しい発見を見いだすもととなり、それによって、寛容性・多様性のある社会は作り出せるのではないかと考えていること。そして、既存の概念、障害、福祉を超えようとする試みが、まさにアートだと捉えていること。

総括

15年間の活動で、障害をどのように理解していくのか、集団・多数派との、異質、差異、違和感を超えて、そこに「関係」を築いていくにはどうしたらいいのか、といったことに悩み、様々なことを行ってきた。今年度の事業は、障害福祉施設で行われている日常、関係の作り方、関係のあり方を開くこと、そしてこの現場を見ていただくこと、さらに、一緒に語ること、考えることを中心に行った。(のヴぁ公民館オープン、かたりのヴぁ、学生かたりのヴぁ、全国規模のアートフォーラムの開催)そしてそれにより何よりも「伝わる」ことが実感できた。
障害、福祉といった枠を超えようとする試みは、様々な揺さぶりとなる。ますます硬直していく社会の中で、小さい歩みではあるが、これからも続けていかなければいけないと強く思う1年であった。