活動の目的
昔ながらの風景や暮らしが急速に変化しつつある地域において、その場所に根ざした創造活動の拠点をつくり、継続した活動を行っていくこと。その実践を通して、暮らしのなかにアートを浸透させ、一人ひとりの誇り・創造力を取り戻すと同時に地域に潜在する価値を掘り起こし、新たなつながりを創発させていくことを目的とする。
活動の内容
1)地域に根ざした創造活動拠点の継続展開
①「新・福寿荘」:アパートという特性を活かし滞在制作の場としてレジデンスプログラムを新たに展開
②「kioku手芸館たんす」:アーティストと地域の人々が出会い共創する場として、住民を巻き込んだ作品制作やワークショップを長期的に実施
③①と②における、進行中のプロジェクトを公開するためオープンスタジオを開催
2)新たな創造活動拠点の開拓:西成区内の新たなエリアにおける創造の場の創出に向け、プロジェクトを実験的に展開
3)子どもオーケストラ:今年度から中高生を交えた即興音楽のワークショップを始動
4)地域外への発信として公立文化施設との連携:「ラウンドテーブル」を開催
実施場所: 大阪市西成区山王・今宮エリア周辺、大阪府立江之子島文化芸術創造センター(西区)
参加作家、参加人数
1)「新・福寿荘」パラモデル「kioku手芸館たんす」薮内美佐子[参加人数]たんすWS:324人/オープンスタジオ:516人
2)きむらとしろうじんじん[参加人数]1,057人
3)大友良英、河辺知美、横沢道治、PIKA☆、井上智士[参加人数]216人
4)トークゲスト:熊倉純子、山出淳也、齋藤啓、吉澤弥生[参加人数]46人
他機関との連携
西成区役所総務課:事業展開の連携、広報の協力
今池こどもの家、今宮中学校:企画・運営のアドバイス、児童とのコーディネート
NPO法人まちづくり今宮、今宮ふれあい地域活動協議会:事業運営の協働、広報面の協力
活動の効果
今年度新たに始動したプレプログラムでは、2014年度で閉校となる小学校の跡地活用も視野に入れたプロジェクトを実験的に試行したことで、これまで関わりのなかったエリアにおいて地域の人々との新たなつながりや活動を生み出した。また20年以上使われていなかった陶芸窯を校内に発見し、窯を再生していくことで、多世代が集う創造活動拠点としての可能性を見いだすことができた。
活動の独自性
アーティストが地域のなかで実験的な表現活動に時間をかけて取り組む環境づくりと、活動のプロセスを地域住民と共有し、様々な関わりを生み出すマネジメントに注力していること。地域に根ざした創造活動の実践を通して、住民のなかに地域コーディネーターを発掘し、積極的に連携・協働を図っていくことで暮らしのなかに活動を浸透させ、アーティストと地域の双方にとって有効な創造の現場をまちのなかに創出していることが、活動の独自性としてあげられる。
総括
地域に根ざした創造活動拠点「新・福寿荘」と「kioku手芸館たんす」は、継続した取り組みにより活動や場所が地域に浸透しつつある。「たんす」では、ワークショップに参加する地域住民たちの個性や潜在力を開花させ、オープンスタジオ中には、「たんす」に集う地域の女性たちがメニュー作りから接客までの運営を担う喫茶を企画することができた。これまでの活動の成果として、住民らによる自主的な活動の展開が今後さらに期待できる。新たなエリアにおけるリサーチとしてのプロジェクトにおいても、住民との関係性を作り連携・協働の体制を作っていくことで、閉校になる小学校の跡地利用について共に考える場を創出し、次年度の活動へとつなげている。また、地域の恒例の行事として定着していくことをめざし長期的に取り組んでいる「子どもオーケストラ」では、これまで参加している子どもたちに加えて、中学校でもワークショップを実施し、新たな連携を図った。これら複数の事業を通して、活動エリアやネットワークを少しずつ広げ、地域のなかに有機的なつながりを生み出していくことが、新しい地域づくりに向けた小さな一歩になると考えている。