アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

『瓦の音楽 music of KAWARA』~楽器としての瓦の可能性~

特定非営利活動法人 淡路島アートセンター

実施期間
2014年4月~2015年3月

活動の目的

地域の誇る伝統産業であり、ものづくりの文化である「瓦」の新たな可能性を、音楽家と地域住民が協働で探求し、そのプロセスをともに享受し、またそれらの価値を広く提示普及すること。

活動の内容

兵庫県主催「淡路花博2015」一環事業として、まちあるきプログラム『瓦の音さんぽ』(3月29日~5月10日)開催に向けた準備作業(プログラム企画、瓦楽器制作、展示やマップ冊子の制作等)を通年事業とし、
【7~9月】広島市現代美術館への大型瓦楽器の出展
【11月3日・4日】イギリスより音楽家2名を招聘、瓦の音楽を媒介に地域住民と交流を果たすコンサート&ワークショップの開催
【11月21日】洲本市内保育所での音遊びワークショップの実施
【11月~3月】映像作家によるドキュメント制作
以上を行なった。
実施場所:兵庫県南あわじ市津井地区および洲本市(淡路島)

参加作家、参加人数

【監修アーティスト】野村誠、やぶくみこ
【招聘音楽家】エンリコ・ベルテッリ、エミリー・ロバートソン
【アーカイブ/デザイン】上田謙太郎/fuuyanm
広島市への出展では、2カ月強の期間を通じて1万人以上の来場者が瓦楽器に触れ、島内での企画に加えWEB上での映像が1000人以上の閲覧を記録するなど、広く周知することができた。

他機関との連携

津井地域の瓦工場5軒のほか瓦師有志、淡路瓦工業協同組合、ゴルフクラブ、幼稚園、小学校、公民館、文化施設、島外では現代美術館、交響楽団、他プロジェクト事務局、市民ギャラリー等との連携のもと本事業を進めている。

活動の効果

瓦楽器ほか展示を集落内に設置、瓦のまちの散策を楽しんでもらうという企画を構築してゆくにあたり、継続的に地域の多様な人々と関わる機会を得、関係性を現在も深めてゆくことができている。また一方で、島外の現代美術館や他プロジェクトへの出展・協力、WEB上での映像公開等によりますます広く本事業を認知してもらう1年となった。

活動の独自性

音楽家の衝動的創造性が、歴史ある地域文化であり産業でもある瓦と結びついたこの希有な事例は、いわゆるアートプロジェクトにとどまらず、全国各地に見られる伝統産業の斜陽化という課題への解決策として、一つのモデルケースを提示するかもしれない(徹底した響きへのこだわりと製瓦という二つの専門性の連携によるプロダクト開発も製品化に向けて現在進行中である)。また、日本のみならず東南アジアやヨーロッパでも見られる“瓦”と“音楽”という世界共通言語の化学変化がもたらす文化交流の可能性は、今後ますます言語や国籍の壁を越えてゆくものになると期待している。

総括

本事業を淡路瓦の中心地・南あわじ市津井地区に本格的に持ち込むことを試みた本年度は、春企画「まちあるきプログラム 瓦の音さんぽ」(3月29日~5月10日)に向けた準備のプロセス、11月の海外音楽家を招聘しての交流事業において【地元工場・組織・個人との連携体制の構築と強化】【企画への参加など地域住民への浸透度】の観点から確実に成果を重ね、この春企画において一つの結実を果たした。満員立ち見も出たオープニング(3月29日)には京都や大阪、徳島など島外からの参加者に加え、地元の多世代にわたる人々が訪れた。また2014年夏の広島市現代美術館への大型瓦楽器の出展では、1万人以上の来場者が淡路瓦に触れ、演奏。その他「千住1010人の音楽」など他プロジェクトへの瓦提供、アーカイブ映像のWEB公開などにより【島外機関・組織との連携体制の構築、および事業の具現化】【プロジェクトのさらなる周知拡大】を達成、またそこから発展し来年度、海外の瓦産業のまちとの連携事業の計画も進んでいる。今後のさらなる飛躍が期待される。