アートによる地域振興助成成果報告アーカイブ

まちじゅう美術館事業 壁画プロジェクト

別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会

実施期間
2014年11月4日~2015年3月20日

活動の目的

観光動態の変化などによる観光客の減少、若年層の定住離れが進み、活力を失いつつある別府市内の中心市街地。単一の価値観ではなく、多様性を受け入れ変化に対応した地域社会を支える文化基盤を創出する。市民が主体となる特徴ある地域活性化を図り、文化創造都市「別府市」の実現を推進する。

活動の内容

大分県内外の計3組のアーティストを招聘し、別府の老舗ホテル・商業施設等をキャンバスとして活用させていただき、壁画制作を行った。制作はアーティストだけによるものではなく、地域住民等に広く呼びかけを行い、作品制作に直に関わってもらうことで、協働制作となるようにした。各アーティストがただ制作するだけではなく、本事業について地域住民に広く知ってもらうために、各アーティストによるトークを行うことで、アーティストと地域住民の交流の場を設けた。今回の事業で制作された壁画や、現在中心市街地にて鑑賞可能な既存アート作品とともに、地域の温泉や飲食店情報を掲載する「アートまちあるきマップ」を制作した。
実施場所:大分県 別府市

参加作家、参加人数

・HITOTZUKI (県外作家)
ワークショップ:18名、トーク:30名(※国本泰英とトーク同時開催)
・国本泰英(県内作家)
ワークショップ:15名、制作ボランティア:5名
・淺井裕介(県外作家)
制作ボランティア:80名、トーク:30名

他機関との連携

[壁画制作協力]トキハ別府店(百貨店)、べっぷかんこうかい(能楽普及団体)、ホテルニューツルタ(老舗ホテル)
[マップ制作協力]別府市内の飲食店・雑貨店など36店舗

活動の効果

地域住民に壁画の制作に直に関わってもらうことで、アーティストと交流を深めながら作品制作に取り組むことができ、まちと地域住民にとって自慢できる魅力的な作品になった。また、制作したマップは、観光協会や別府市内外の飲食店・温泉等、観光客が多く立ち寄るところに設置することで広く手に取られ、新たな回遊を生み出すことに成功した。来別者に向けた別府の楽しみ方の提案のみならず、中心市街地の活性化に寄与した。

活動の独自性

各アーティストとともに別府市中心市街地を散策し、建物の所有者からは場所の歴史をうかがった。地域住民との交流や、その場所からのインスピレーションを得ることでコンセプトを見つけ出している。また、制作過程に、多くの地域住民に参加してもらい、地域住民とアーティストが一体となって協働制作を行ったことが、今回の事業の大きな特徴である。主体的に参加した地域住民は、作品完成後、自ら周囲へ壁画の紹介や案内を行った。
これまで別府中心市街地には多くのアート作品が制作されたが、それらを紹介する媒体がなかったため、今回の事業で制作された「アートまちあるきマップ」の存在意義は非常に大きい。

総括

本事業にて壁画を制作した、別府の老舗商業施設「トキハ別府店」の屋上駐車場は、直通エレベーターから降りた瞬間に別府市の市街地が一望でき、壁画作品を展示している場所からは、海側が一望できる。そこは、地域住民にもあまり知られていない場所だった。そのように、とても良い場所であるにも関わらず、あまり観光客や地域住民にも知られていない場所を、本事業を通じ、芸術の振興に寄与するだけではなく、別府の新たな魅力の創造による地域の活性化へ繋げることができた。
また、事業途中に外部講師を招いたトークイベントを行い、他地域におけるアートガイドの事例や当事業の説明を行うことで、地域住民の理解や興味をさらに得ることができた。2015年夏季に行われるJRデスティネーションキャンペーン、国際芸術祭「混浴温泉世界」に向け、ツアーが定期的に敢行できるよう今後も継続的に育成を行っていく。また、春に県立美術館が開館する大分市等、県全体の文化事業などとも連携を図ることで、地域+アートによる新たな広域連携の礎となることができた。今後も文化芸術をまちづくりの柱として位置づけ、促進させていくために継続的な取り組みを行っていく。