活動の目的
徳島県三好市には、マチと呼ばれる四国の交通の要所で栄えた阿波池田と、ソラと呼ばれる祖谷、大歩危、小歩危のある山間部がある。伝統的な建築様式も生活様式も違う地域を舞台に古民家を利用した現代美術の芸術祭を行う。今ある地域資源の再編集により、地域の価値の再発見と魅力発信、交流人口の増加を目的とする。
活動の内容
今年度のテーマを「古民家」「食文化」「IT文化」に定め、春頃から市内外の連携NPOや有志とともに展示とワークショップのアーティストの選定を始める。プレイベントとして、赤嶺智也氏を招聘、アーティスト・イン・レジデンス(以下、AIR)を行い、地域住民との交流を図った。昨年に引き続き、展示会場となる古民家との交渉と同時に、制約が多い古民家での展示に同意し、趣旨に賛同して制作をしてくれるアーティストとの交渉を行う。また、山間地であるため経営規模が小さく認知度が低い食材(例:そば米、ごうし芋、山茶など)を使った食のワークショップの企画、人口比に対するスナックの数の多さが全国で5本の指に入る池田では、これを一つの文化資源として取り入れたワークショップ、トークショーの企画を行う。
実施場所: 徳島県三好市 池田地区(うだつのある街並み)と東祖谷落合集落(重要伝統的建造物群)
参加作家、参加人数
四国、徳島県ゆかりの現代アーティストを中心に22組のアーティストが参加。また、週末ごとの「食」に関するワークショップでは、foodscape!、都築響一氏ら4組が地域に残る食文化にまつわるワークショップやトークショーを行った。展示期間中の来場者数、参加者数は約1,300人。
他機関との連携
徳島県、徳島県三好市、NPOち庵トラスト、なこちーLife Share Cottage-、かずら橋タクシーなどと連携して事業を実施した。
活動の効果
地理的条件により、独自の文化発展を遂げてきた山間部の文化の魅力を広く発信し、交流人口の増加が図れた。徐々にリピーターが増え、地域のファンづくりに成果が出てきた。AIRも試験的に開催し、招致アーティストの中期滞在により、地域住民との交流促進、またアーティスト目線の文化資源の発掘、再編集により、地域価値の再認識を促す。活動分野の違う地域団体の参加により、さらなる発展が期待できる。
活動の独自性
①徳島県西初のアートフェスティバルの実施であること。
②山間部を含む珍しいアートフェスティバルとなること。
③住民参加型のフェスティバルにすることで、住民の主体性が高まり、地域の協力体制が強化されること。
④徳島はITインフラが整備されているため、山間部の公共交通の不便さを逆手にとり、SNSを使って移動手段の問題の解消と地域住民との交流を図る取り組みをしていること。
⑤徳島県にし阿波における若年層をターゲットとする来訪者のニーズの調査。
総括
地域の価値の再発見、魅力発信、交流人口の増加を目的として2013年から始まった本芸術祭は、今年度で2回目の開催となる。NPOち庵トラスト、NPOマチトソラ、かずら橋タクシーの協働事業として始まるが、市内外の他団体、地元有志、移住者など協力者が増えつつある。企画運営も多様な立場からの意見、ニーズを盛り込んで芸術祭と関連事業を行い、活力ある地域活性化を行っている。
アーティストとさらに多くの地域住民の交流、協働の機会を生み出す企画を行う。加えて、福武財団の報告会参加を機に、他団体との交流、情報交換ができ、新たなネットワークも生まれたため、さらに広域の協働も推進していきたい。
また期間中の参加人数は1,300人と多くはないが、何度も訪れてくれるリピーターの獲得に成果が出始めている。
今後の課題として持続可能な運営のシステムを確立する必要性がある。